ブラジルと日本、双方の狭間で感じた迷い
わたしはブラジル出身ですが、名前の通りルーツは日本にあります。父は日本人で、二十代の頃にブラジルに移り住み、母と出会い結婚しました。さらに母方の祖父母も日本人のため、遺伝子的には100%日本人になります。幼い頃から日本に触れている環境でしたので、自然と日本語を勉強するようになりましたが、普段は家族ともポルトガル語で会話しており、心は完全にブラジル人であるため、自分の国籍はどこなのか時折わからなくなってしまい、迷いを感じることがありました。日本語を習得するために入学した国際ことば学院外国語専門学校では、入学当初なかなか日本語が上達せず、見た目が日本人であるにも関わらず日本語が話せないことに、強い負い目と、またも自分の国籍に対する迷いを感じていました。そんな時、いつもお世話になっている先生から「国籍は関係ない、ブラジルと日本、両方の文化を知っていることはあなたの大きな強みです。」と言ってもらい、とても安心できました。その瞬間、幼い頃からの迷いが消え、もっと前向きにがんばろうと思えました。
習得した英語で新たなことに挑戦
小さい頃から日本語を勉強するよう両親から言われていましたが、平行して英語も勉強していました。「英語ができれば可能性が広がる」と思っていたため、高校3年生の時にアメリカのワシントン州キャスラメットにある高校へ約1年間留学しました。留学中はホストファミリーと一緒に暮らしており、「部屋に一人でいるとブラジルのことを考えてしまうから部屋にはいかないで」と言ってくれて、ずっと会話をしてくれました。ブラジル人がほとんどいなかったこともあり、24時間英語漬けの日々を送ることができました。今でも英語学習を続けています。
そんなある日、先生にプレコンについて教えてもらい、チャレンジすることにしました。課題テーマの中で「無人駅」を見たとき、このテーマであれば自分のアイデアを形にして、オリジナリティを出せると思い、興味をひかれました。また、ブラジルでは、都会を除けば車が主な交通手段で、あまり駅や電車は使われていないことから「もっと知りたい」という気持ちになり、知らない分野だからこそ、アイデアが出てくると思いました。現在、静岡県に住んでいるため、直ぐに県内の無人駅へ下見に行き、川根小山駅の見た目が私のイメージする無人駅に最も近く、名前も面白いと感じたので、この駅を中心にアイデアを提案することにしました。
オリジナルキャラ「茶レンジャーズ」と「英語力」で本選出場を掴みとる
プレゼンテーション資料作成に着手し、最初に出たアイデアが、静岡県の名産品である「お茶」と川根小山の名称からとった「猫」を組み合わせたオリジナルキャラクターの「茶レンジャーズ」になります。イラストを入れた方がいいと思いましたが、絵が得意ではないため、絵が上手な先輩に猫をモチーフにして描いてもらいました。非常にクオリティが高いので是非皆さんにも見ていただきたいです。この「茶レンジャーズ」を中心に「猫×茶のキャラクターデザインコンテスト」「SNSでのコンテスト投票」「お茶の試飲や駅限定ティーバッグ販売」など、川根小山駅を盛り上げるための施策を考え、プレゼンテーションに落とし込んでいきました。
そういったアイデアに加え、英語力が本選出場のキーになったと思っています。英語プレゼンテーションコンテストであるため、英語にもしっかりと重きを置き、英語の発音やイントネーションをしっかりしてインパクトを与えたいと考えていました。また、どんなプレゼンターがすごいと言われているのか動画を見て研究し、その人の真似をするようにしました。2次予選は小さな画面内で表現しなければいけないので大変でしたが、アイデアと英語が総合的に評価されたことで本選までいけたと思います。本選では、メディアの方々や審査員の方々の表情をしっかり見て、自分の提案内容がきちんと伝わっているか気をつけながら話していました。
プレコン挑戦の前後で感じる成長
今回大会に出場して、期限があるものに対して毎日少しずつ計画的に進めることができたことが、一番の成長だと感じています。わたしはかなりの怠け者で、面倒なことは後回しにして直前に慌てたり、結局何もできなくなったりしていたのですが、今回の経験を通じ、毎日少しずつ計画的に進めることができる、計画力を身につけられました。現在2年生で、来年卒業ですが、これから就職するか進学するか、きちんと計画しなければいけないと感じています。最終的に決断するためには、プレゼンテーションの準備と同じように、何をしたいのかを考え、調べ、先生や回りの方へアドバイスを求めることが必要です。以前は何かを聞くことが恥ずかしかったり、不安だったりしたのですが、今は目標のためにできるようになりました。プレコンに参加したことでこういった習慣を身につけられたと感じています。
将来的には、いつか日本で通訳者として活躍したいと考えています。日本にはポルトガル語や英語が主言語の外国人がたくさん住んでいて、日々色々なことに困っていると思うので、彼らの力になりたいと思っています。