「背水の陣」で身に付けた英語力
学生時代は特に英語が得意だったわけではなく、海外旅行の際に必要最低限の英語を使っていたくらいです。新卒入社した外資系コンサルティング企業の入社試験でも英語が全然できませんでしたが、他の部分を評価してもらえたのか、採用されました。
入社後少しして配属された部署では、本当に「新しい上司はフランス人」でした。同僚はトルコ人とイタリア人。一方、クライアントはザ?日本企業だったので、日本人である僕が双方の間に立ち、仕事を進めなければなりませんでした。もう地獄でした。上司と同僚が何と言っているのかわからないわけですから。「もっとちゃんと勉強しておけばよかった」と後悔もしました。しかし、自分が英語を使えないと仕事が回らない状況なので、まさに「背水の陣」で、必死に食らいつきました。
一番深刻なのが、単語がわからないことでした。言われたことが想像できないとアウトなので、とりあえずわからない単語はメモして後で調べて「なるほど」と、その繰り返しです。あとは、先輩のかっこいい英語の言い回しを真似しました。英語のベースがなかったので、正しいかどうかもわからないまま、見よう見まねで全部吸収していきました。
当時は本当に苦しかったのですが、今となっては笑い話ですし、あのときがあったら今があるとも思っています。
刺激を求めて中国へ
外資系コンサルティング企業の日本オフィスで3年働いた後、中国オフィスに転籍しました。日本で働いていたときに、中国に出張で約3週間滞在したのですが、当時(2005年)の中国はものすごい勢いで経済が発展しているときでした。何もかもに活気があって、「自分が働いた分、社会が元気になっていく」と体感できました。帰国後、「中国に行きたい」と社長に直訴し、そのときは笑われて終わりましたが、運よく半年後、中国オフィスに転籍することができました。言うのはタダなので「やりたい」と言い続けたらチャンスが巡ってきた、という感じです。
中国では、日本では起きない想定外のことがバンバン起きるので、常にわくわくしていました。僕は旅が好きなのですが、旅の最大の醍醐味って、景色も言葉も違う中、予定調和ではなく予期せぬことが起きたり、新しい友達ができたりすることだと思うんです。中国で働いた日々も、旅と同じで、毎日が刺激的でした。
自分の能力を高めることが最大の防御
中国に転籍、世界一周旅行、シンガポール在住といった経歴から、「すごいリスクを取りますね、フットワークが軽いですね」などと言われることがありますが、僕としては自分自身に正直に生きていたらこうなった、という感じです。会社員でなくなるというのは、一見自由ではありますが、自分の身は自分で守らければならず、決して楽ではありません。土曜日の夜に子どもと遊んでいても、アイデアが浮かべばすぐメモし、電話もする…みたいに、精神的に休まることはないです。自由を選んだ分、人一倍頑張らないと食べていけないですから。
でもそれは当たり前のことだとも思っています。なぜなら、安定した会社に入ることではなく、自分の能力を高めていくことが、生きていく上で最大の防御力?安定につながるからです。個人としての力があれば、たとえ会社が倒産しても転職できるし、仕事もやってくるはずです。ここ数年のインターネットの発展などを考えると、一つの会社に勤めるのではなく、一個人がプロジェクトベースなど多様な形で働くことがより当たり前になってくるのではないでしょうか。少なくとも私は、今の働き方を選び、大変なことは多いですが、日々「生きている」という実感があります。
グローバル人材=変化を楽しみ乗り越える人
僕の考えるグローバル人材とは、一言でいうと、いろんな変化や想定外のことを楽しみながら乗り越えられる人です。「グローバル」というとすごくハードルが高いように聞こえますけど、例えば新規事業をやるとか、慣れないことをやる場合でもそう。「やれ」と言われたときに「勘弁してよ」「できない」「苦しい」ではなく、「おお、いい波が来たね。乗りこなしてやろう」とか、「壁は高いほうが燃えるぜ」というマインドで立ち向かっていける、何でも楽しめる人が、グローバル人材なんじゃないかと思います。
当然ながら、ある程度の語学力も大事です。日本では優秀でも、英語ができなければ海外では残念なことになってしまいます。
失敗を恐れるな!
学生のみなさんには今、挑戦してほしいと思います。企業でもそうですが、リスクばかり気にして、失敗する経験が近年失われているように感じます。でも、挑戦しなければ成功を勝ち取ることはできません。社会人になれば、失敗がビジネスに大打撃を与えることもありますから、挑戦しづらくなるのも事実です。失敗が許される学生時代、何もせずに終えるというのは最大の機会喪失です。成功はもちろんですが、成功しようと本気でチャレンジした上での失敗は、必ず次につながるプラスのモチベーションになります。
プレゼンテーションの極意
私もビジネスでプレゼンテーションをする機会はありますが、プレゼンにおいて大事なことは2つあると思っています。一つは、何のためにプレゼンをするのか考え、手段と目的を履き違えないことです。コンテストとなると、それ自体が目的になってしまいがちですが、コンテストの場で何を伝えたいのかを忘れてはいけません。でなければ、ただの自己満足で終わってしまいます。相手が誰なのか、何を求めているのかを考え、聞いてくれた人に何か次のアクションにつなげてもらう。そこまでがプレゼンテーションです。
もう一つは、パッション?情熱です。日本人の苦手な部分かもしれませんが、相手の心を動かさないといけないのに、棒読み?抑揚のない話し方では伝わりませんよね。逆にコンテンツが物足りなかったとしても、情熱を込めて伝えれば、「この人のためならやってみようか」と思ってもらえる可能性もあります。パッションを忘れずに、挑戦してください。