現在、WBC(ワールド?ベースボール?クラッシック)での侍ジャパンの活躍で日本中が沸き立っています。世界が認めるスーパースター、大谷翔平選手(エンゼルス)、140億円を超える大型複数年契約を最近獲得した侍たちの兄貴、ダルビッシュ有投手(パドレス)。そして、日本の高校球児を彷彿させ人気急上昇のラーズ?ヌートバー選手(カージナルス)などから、多くの人々が勇気をもらっています。
WBCの盛り上がりとともに注目されているのが、アメリカの野球版「虎の穴」とも称される「ドライブライン?ベースボール」(Driveline Baseball: https://www.drivelinebaseball.com)です。米国西海岸ワシントン州シアトル郊外にあるトレーニング施設には、プロ?アマの両方で年間約500人の野球選手が訪れているとされます。あの大谷、ダルビッシュ、ヌートバーの3選手もこの施設でトレーニングをしたそうです。ちなみに、指導料金は、トレーニングマニュアル本、重量ボールなど込みで「14万円から」に設定されているとのこと。
この「ドライブライン」は、世界でも有数のデータドリブン型野球アスリート養成所(兼研究所)として認められています。最先端のモーションキャプチャー評価、理学療法評価、専門的な評価と再試験に基づく投球、打撃などの科学的なデータ分析と高度なコーチング?ノウハウなどを通じてスーパーアスリートを養成しています。
ひるがえってビジネスの世界を見たとき、周知のとおり、現在、DX(デジタル?トランスフォーメーション)に大きな関心が向けられているなか、このデータドリブン?アプローチにも注目が集まっています。
簡単にいえば、「データドリブン(Data Driven)」(データ駆動)とは、最新のテクノロジーで収集したデータを、AI(人工知能)などにより分析し企画の立案や未来の予測を実施し、経営の意思決定を行うことです。たとえば、「データドリブン?マーケティング」といえば、そうした手法を活用してマーケティングの方策?実践などに関する意思決定を行うことを意味します。
では、従来から行われてきているデータ活用と、データドリブン?アプローチはどこが異なるのでしょうか。従来型のデータ活用の分野においては、変化が小さく従来の延長線上で予測がつく環境のなかで、売上分析、仮説の検証、データの可視化や予測が行われてきました。
一方、データドリブン?アプローチでは、先がまったく予測できない「VUCA」(ブーカ、Volatility/Uncertainty/Complexity/Ambiguity)の時代に、新たな分析手法やAI(人工知能)などの最先端技術を導入することで、新鮮な発見につながるような未来型のデータ分析と施策の実践が期待されています。
残念ながら、このデータドリブン?アプローチに関して、米国に比べると、日本企業の導入は遅れています。その背後には、データ分析の有用性の理解不足、不十分なデータ活用基盤、縦割り組織にともなうデータの分断などがあります。
無論、データドリブン?アプローチにも、長所と短所(Pros and Cons)があります。長所としては、(1)意思決定における間違いやバイアス(偏り)の最小化、(2)「的」を射た科学的検討作業による無駄の排除に伴う生産性の向上、(3)意思決定の透明性?理解の向上(意思決定の属人性排除)があげられます。
一方、短所としては、(1)データに過度に依存する狭小化した思考の可能性、(2)正しいデータであっても誤って解釈してしまう可能性、(3)社内(in-house)で基盤構築する場合の経営資源上の高いコストがあげられます。
上記の「プロコン」(Pros and Cons)から導き出せる、日本企業に対する短中期的インプリケーションとして、「短所を意識しながらも、データドリブン?アプローチを組織内に定着させることが重要で、それが時代の流れ」といえます。
以上のように、WBCで活躍する侍ジャパンから、ビジネスにおけるデータドリブン?アプローチについて思索する機会を得ることができました。「それ行け!侍ジャパン」。