「Met Gala」は資金集めのためのイベント!
2023年5月1日(月)。米国ニューヨークのセントラルパークにある、世界最大級のメトロポリタン美術館で米国『ヴォーグ』(Vogue)編集長のアナ?ウィンター(Anna Wintour)氏が共同主催するファッションの祭典『Met Gala』(メットガラ)が開催されました。
「Met」はメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)の通称。「gala」は「お祭り」「祝祭」という意味です。これまで、「Met Gala」は毎年5月の第一月曜日(「メットガラ?マンデー」)に開催されています。
「Met Gala」は、前述のメトロポリタン美術館所属の「コスチューム?インスティテュート」(服飾研究所、The Costume Institute)が毎年開催している特別展のオープニングを飾るイベントです。同研究所は1948年に開設され、15世紀から現代に流行したファッション約3.3万点がコレクションされています。
アナ?ウィンター氏が「Met Gala」の共同ホスト
1948年にスタートした「Met Gala」ですが、1995年から前述のアナ?ウィンター氏が運営に参加しています。現在、世界中のセレブリティやファッションアイコン、文化人らが一堂に会するファッションイベントとして世界的に注目を集めています。「ファッション界のアカデミー賞」と呼ぶ人も少なくありません。
ガライベントは有料の完全招待制で、チケット代などはコスチューム?インスティテュートの研究活動資金などに使われています。新型コロナ感染拡大前の2019年には過去最高の1,500万ドル(約21億円)資金を集めました。
情報サイト『Page Six』によると、昨今のインフレの影響により、2023年の「Met Gala」では、個人のチケット代が30,000ドル(約418万円)から50,000ドル(約697万円)へと値上げされたようです。
大手ブランドが「Met Gala」のフルテーブルを購入することも!
「Met Gala」に参加する(招待された)すべてのゲストが自分でチケット代を負担しなければならないわけではありません。大手ファッションブランドや企業が、最低でも275,000ドル(3,800万円)する「フルテーブル」を購入し、セレブリティを招待して、そのブランドのドレスで「レッドカーペット」を歩いてもらうこともあるそうです。つまり、「Met Gala」をブランドの宣伝として活用しているのです。
2023年の「Met Gala」には、共同ホストとして、女優のペネロペ?クルス、シンガーソングライターのデュア?リパ、女優のミカエラ?コール、元プロテニス選手のロジャー?フェデラーが名を連ねました。通常、総勢で600名ぐらいのセレブや著名人が参加するそうです。
2023年のドレスコードは『カール?ラガーフェルドに敬意を表して』
2023年の「Met Gala」のテーマは、『Karl Lagerfeld: A Line of Beauty(カール?ラガーフェルド: 美の系譜)』。シャネル(CHANEL)、フェンディ(FENDI)、クロエ(CHLO?)などのメゾンを率いたデザイナー、カール?ラガーフェルド氏の創作が特集されました。彼が携わったすべてのメゾン(ファッションブランド?メーカーのこと)、そして彼自身のブランドから150点以上の衣装が、もととなったスケッチとともに集められました。また会場デザインは、日本を代表する建築家、安藤忠雄氏が担当しました。
オープニングを飾る「Met Gala」のドレスコードは、『カールに敬意を表して(in honor of Karl)』。多くのゲストたちは数々のメゾンでカールが手がけたドレスをまとい、レッドカーペットを歩きました。
「レッド?カーペット」の上を歩く人は自信がみなぎっている!
ここで、この「Met Gala」、そして映画の祭典「アカデミー賞」などで常に目にする「レッド?カーペット」(赤の絨毯)の由来について確認しておきましょう。
紀元前から、赤い道は「高貴な人々」や「神々」が通るものという考えがありました。つまり、「赤」は、権威を象徴するカラー。ファッションでの赤い色は、健康的で、アグレッシブで、自信がみなぎっている印象を伝えます。近代では、1902年にニューヨーク?セントラル鉄道で豪華列車「20世紀特急」に乗客を案内するときに真紅のカーペットを敷いた史実にさかのぼるそうです。
レッドカーペットの持つ効果?影響力により、レッドカーペットの上を歩くだけで、その本人や見る側もそうしたパワーを持ち合わせた人物であるという感覚になります。また、映像的な意味でいうと、レッドカーペットが敷いてあると、その上を歩いている人物のタキシードやドレスの黒との対比で写真や映像が美しくなる効果が生まれます。
「Met Gala」の成功の理由は?
「Met Gala」が世界的に注目され成功しているいくつかの理由を整理しておきましょう。
第1が、その伝説的な「招待客リスト」だといわれています。「Met Gala」に招待されるには、有名かつ富裕であることにくわえ、共同主催者のアナ?ウィンター氏が自らリストをチェックし、「出席OK」を出さなければならないという難関を勝ち抜かなければなりません。つまり、「Met Gala」に参加することは、著名人(セレブ)にとっての「ステータス?シンボル」になっているのです。セレブにとって、より上位の「登竜門」というイメージが広まれば、それは「Met Gala」自体のさらなる付加価値につながります。
第2が、その「秘密性」だといわれています。確かに、レッドカーペットの様子は、ファッション誌「ヴォーグ」のウェブサイトやメトロポリタン美術館のウェブサイトなど、さまざまなチャネルでストリーミング配信され、ソーシャルメディアで情報が拡散されます。
「Met Gala」では、セレブはファッションで「遊ぶ」ことが求められる!
しかし、「Met Gala」で実際何が行われるのか、外部の者は正確に知ることができません。音楽の演奏や映画の試写会、「Met Gala」の開幕を飾る展覧会のプライベートな見学などが噂されていますが、写真撮影は禁止されており、ベールに包まれている状態です。この秘密主義も、「Met Gala」に大きな付加価値を与えているようです。
第3が、毎年設定される「ドレスコード」です。毎年、「Met Gala」ではその年の展示会のテーマを採用し、ゲストとデザイナーにそのテーマに沿ったファッションで「遊ぶ」ことを推奨されます。クラシックな装いを選ぶセレブがいる一方で、世界に衝撃を与えるために参加する参加者もいます。
露出の多い「ネイキッド?ドレス」の衣装など、たとえそれがネガティブな話題になったとしても、話題になること自体に価値があります。そうすれば、共同ホストのアナ?ウィンター氏が、次の年もそのセレブを招待する可能性が高くなるといわれています。
上記なような要因で、「Met Gala」への注目度が高まれば高まるほど、ファッションの祭典としての価値は上昇し、社会的な影響力も強まります。そうした効果は、「Met Gala」の第一義的な目的であるメトロポリタン美術館所属「コスチューム?インスティテュート」の活動資金集めにも大きなプラスになります。
同時に、世界が注目する「ファッションの祭典」として、世界のファッション産業全体を盛り上げることに貢献できるのです。
映画『プラダを着た悪魔』の出演者が集結!
さて、「Met Gala」といえば、共同ホスト役の米国『ヴォーグ』(Vogue)編集長のアナ?ウィンター氏。そして、ウィンター氏といえば、名作『プラダを着た悪魔』(The Devil Wears Prada、2006年、20世紀フォックス)を思い浮かべる人も多いでしょう。
「プラダを着た悪魔」の異名を取る有名ファッション誌の「鬼編集長」と、ファッション音痴のヒロインが確執の中でどう関係を築くかを描き、働く女性たちの共感を集めて大ヒットしました。公式には否定されているようですが、その鬼編集長のモデルとなったのが、ウィンター氏ではないかという噂は多くの人に知られています。
そして、2023年の「Met Gala」に、同作の出演者も参加したのです。主人公のアンドレアを演じた俳優のアン?ハサウェイ、劇中でアンドレアと一緒にメリル?ストリープ扮するファッション誌『ランウェイ』の編集長ミランダのアシスタントを務めるエミリーを演じたエミリー?ブラント、さらに『ランウェイ』のエディター役でカメオ出演したモデルのジゼル?ブンチェン。
アナ?ウィンター氏は、自分がモデルと噂された映画『プラダを着た悪魔』を楽しんだ?!
情報サイト『フロントロウ』(FRONTROW)によると、映画の原作の存在を知ったときのアナ?ウィンター氏は「その女の子(主人公)が誰だか覚えてない」と述べたとそうです。
一方、映画のプレミア(公式上映の試写会)に参加したウィンター氏のお嬢さんは、「ママ。みんなはママのことを本当に理解してるね」と語ったとのこと。少なくとも映画の鬼編集長ミランダが「アナに似ている」ということはウィンター氏の家族も認めていたようです。
ちなみに、つまらない作品では中座することも多いアナ?ウィンター氏ですが、『プラダを着た悪魔』は最後まで鑑賞し、そしてイベントにはプラダの洋服を着て参加していたそうです。ウィンター氏なりのちょっとした「ちゃめっ気」かもしれません。
2023年の『Met Gala』が終了してそれほど時間はたっていませんが、2024年の開催に向け、アナ?ウィンター氏による「招待者リスト」のチェック作業がすでに始まっていることでしょう。