マーケティング最前線!

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なぜ、海外でもアニメ『SPY×FAMILY』は人気なのか?!

2024.02.02

 マンガ『SPY×FAMILY』は高校生人気第2位!

LINEリサーチ(運営:LINE)が、高校生に流行している「マンガ」に関する調査結果(2023年6月実施)を発表しました。有効回答数は、日本全国の高校1年生~3年生男女1,003名。主な結果は次のとおりです。

第1に、漫画を週1日以上読む高校生は6割近くいること。第2に、ふだんマンガを読むと回答した高校生(女子411名、男子427名)に「マンガから何か影響を受けたことがあるか」を聞くと、女子では「まわりの人との会話がはずんだ?話題が増えた」、男子では「知識が増えた」がそれぞれトップとなった。

第3に、「いまハマっているマンガ」については、男女ともに1位は『推しの子』、2位は『SPY×FAMILY』がランクイン。男女別では、女子の3位には『山田くんとLv999の恋をする』、男子の3位は『ONE PIECE』。 

『推しの子』は、主人公の青年が、推していたアイドルの子供に生まれ変わる「転生もの」で、同時に殺人サスペンスや芸能界の裏側などのリアルな要素を描いた漫画。『山田くんとLv999の恋をする』は、失恋した女子大生とイケメンプロゲーマーの男子高校生とのラブコメディー。『ONE PIECE』は、海賊王を夢見る少年モンキー?D?ルフィを主人公とする「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を巡る海洋冒険ロマン。

COVID-19と動画配信が米国の日本アニメ人気を高めた!

さて、こうした日本アニメ(マンガ)が、現在、米国の視聴者も虜にしており、10億ドル(1,500億円)市場を形成しています。その大きな要因が、COVID-19のパンデミック禍です。そして、今後、日本のアニメ産業を牽引する市場として、米国に注目が集まっています。

コンサルティンググループの「Precedence Research」によると、2020年の世界アニメ市場規模は約220億ドル(3.3兆円)。10年後の2030年には500億ドル(7.5兆円)に成長すると予測されています。

アメリカの業界ウォッチャーによれば、(前述のとおり)COVID-19の大流行が、ここ数年の米国における日本のアニメ人気に拍車をかけました。

背景として、ストリーミング(動画配信)でアニメコンテンツにアクセスしやすくなったことが大いに関係しています。たとえば、2021年には、(世界全体で)2億人を超えるNetflixの加入者の半数以上が何らかの形でアニメを視聴したといわれています」。 

ニューヨーク大学スターン経営大学院のエンターテインメントビジネスの専門家ポール?ハーダート(Paul Hardart)教授は「ストリーミング時代の素晴らしい副産物は、さまざまなタイプのコンテンツ(物語)を体験できることだ」と述べています。

つまり、ストリーミングサービスの存在によって、アメリカ人(特に若者)が、日本発のアニメにアクセスするのがかつてないほど簡単になっているということです。

 冒頭でLINEリサーチの調査で『SPY×FAMILY』が高校生の間で人気No.2になったことと紹介しましたが、同作品の人気も、日本だけにとどまらず、米国などの海外に広がっています。

『SPY×FAMILY』(原作:遠藤達哉氏、集英社『少年ジャンプ+』)は、2019年3月の連載の開始以来2023年9月時点で累計発行部数は3,100万部を突破している人気作品です。 

『SPY×FAMILY』はスパイアクションコメディ

この作品は、有能なスパイの父、超能力者の娘、殺し屋の母の3人と予知能力犬ボンドが、「仮初めの家族」となって過ごす日常を描いたスパイアクションホームコメディ。舞台は、十数年間の冷戦状態にある東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)という隣同士の国。

 「東西冷戦下」という時代背景や、作中にドイツの「ノイシュヴァンシュタイン城」に似ている城が登場することから、旧東西ドイツをモデルにしているのではないかと噂されています。くわえて、スパイアニメということで、英国のスパイ映画『007』(ダブルオーセブン)の要素も取り入れられているようです。

 西国の凄腕スパイ「黄昏」(たそがれ)は、平和を脅かす危険人物である東国国家統一総裁ドノバン?デズモンドの息子が通う名門校の懇親会に潜入せよ、という指令を受けます。彼は、その任務を遂行するために、精神科医ロイド?フォージャーに扮し、家族で潜入しなければなりません。

 「たそがれ」ことロイドは孤児院にいたアーニャを娘に、市役所で働くヨルを妻に迎えました。実は、そのふたりも裏の顔を持っています。「アーニャ」は超能力者、「ヨル」は殺し屋です。他人の心を読める娘のアーニャ以外は夫ロイドも妻ヨルもお互い裏の顔を知りません。こうして、おのおの秘密を抱えた3人は「仮初めの家族」として生活を送ることになります???

では、米国などの海外ファンは『SPY×FAMILY』のどのような要素を好ましく評価しているのでしょうか。英語圏ユーザーを対象とする情報サイト「Sportskeeda」や掲示板型ソーシャルニュースサイト「Reddit」の記事などをもとに整理してみます。 

第1の要素は、主人公たちが成長する点です。成長しないキャラクターが主役だと、ストーリーの展開が予測可能となり、興味が半減し退屈に思えてしまいます。『SPY×FAMILY』では、最初の数エピソードで、読者/視聴者は、スパイのロイドがアーニャに愛着を持つようになり、彼がアーニャを含む子供たちを守りたいと思っていることを理解します。つまり、ロイドは単なる冷酷なスパイではないことがわかります。

 殺し屋のヨルも、ロイドの妻になろうと努力し、また、アーニャの母親としての母性に徐々に目覚めていきます。同様に、超能力を持ったアーニャも、単にロイドに見捨てられたくないおっとりとした少女から、より普通の可愛らしい少女に変化していきます。

コメディとアクションシーンのバランス

第2が、純粋で楽しい軽快なコメディ要素です。読者/視聴者がカジュアルに楽しめるコメディ?シーンがたくさんあります。そうした軽快なコメディを楽しむための予備知識は必要ありません。一方で、設定がまったく荒唐無稽ということではなく、疑似現実的な西洋世界を舞台にしているため、米国などの海外の読者/視聴者も共感しやすい舞台/ストーリーになっています。

 第3が、コメディ?シーンとアクション?シーンのバランスです。コメディ?シーンが多すぎると退屈になってしまいますが、この漫画は元々「冷戦中のスパイの物語」です。そこで、『SPY×FAMILY』では、人命がかかっているアクション?シーンを交えてストーリーに緊張感/緊迫感を与えています。結局は、夫ロイドはスパイであり、妻ヨルは殺し屋なのです。そのストーリーの基本線はしっかり維持されています。

 こうしたコメディとアクションの「シーン転換」がエピソード全体を新鮮にし、メインキャラクターをかっこよく引き立てています。同時に、いつ何が起こるか予測しにくい緊張感を醸し出し、海外の読者/視聴者を飽きさせません。

第4が、優れたアニメーションとビジュアル表現力です。『SPY×FAMILY』のアクションシーンは派手ですが、過度ではありません。キャラクターの動きはなだらかで美しく、コメディタッチのシーンは高いアニメーション力によって海外の人たちにも理解しやすいように表現されています。

 主人公のヨルは「Waifu」?

第5は、海外の人々から見た妻ヨルの魅力です。ヨルは単なる美しい女性ではなく、状況によっては驚くほどコミカルにもなれ、アーニャに対して母性的で、そして、凄腕の暗殺者です。さらに、一般常識に欠けるなど、彼女の別の特性も加わり、こうした多様な特徴が組み合わさった独自のポジションを確立しているのです。『SPY×FAMILY』内の大人の女性主人公であるヨルの人気の表れとして、海外では、ヨルに関する「コスプレ」も多く作られているようです。

ちなみに英語圏のファンは、「主人公のヨルは『Waifu』(ワイフ)だ」と評しています。「Waifu」とは、英語を第一言語とするアニメ/マンガファンの間で「お気に入りのキャラクー」という意味を持つ言葉です。日本人のアニメ/マンガファンがお気に入りのキャラクターを「嫁」(よめ)と呼ぶことから、英語で嫁を意味する「wife」をカタカナ風にローマ字表記したものが広がったとされます。

第6が、「暗い過去」を持つ超能力少女アーニャのキュートなおふざけ要素です。他人の心を読むことができるテレパシー能力を持っている少女。一方で、彼女の子供っぽい可愛らしさは、アーニャの「ビジュアル」(体型、大きな目、ピンクのグラデーションボブのヘアスタイル)や「声」を含め人々にとって「愛すべきもの」に映ります。さらに、アーニャの明るい笑顔の裏には「暗い過去」があり、アーニャの内面が単純化されていない点も、海外でのアーニャ人気につながっているとされます。

 「仮初めの家族」の中に感じる「家族のきずな」

第7が、「仮初めの家族」の中にある「家族のきずな」の要素です。(前述したとおり)3人の主人公(ロイド、ヨル、アーニャ)は、本当の家族ではありません。ロイドは任務のために結婚して子供を持つ必要があるスパイ。長い間ボーイフレンドを作る必要に迫られており、ロイドの偽装結婚の提案に乗った殺し屋ヨル。ロイドもヨルも相手の本当の職業を知らない。でも、アーニャはテレパシーのおかげでロイドとヨルの本当の姿を知っている。

非現実的な「3人の関係性」で成立している「偽装家族」ですが、時には本当の家族のように思えることがあります。そうした瞬間に、より「多様性」(diversity)への理解が高い海外の読者/視聴者は、普遍的な「家族のきずな」を感じ、この3人に大きな共感を覚えるのです。

ここまで、海外ファンにとっての『SPY×FAMILY』の人気の要素を確認してきましたが、これらは、洋の東西を問わず、ファンであれば共感できる要因だといえます。別の言い方をすれば、そうした『SPY×FAMILY』の数々の魅力は、世界中のファンを惹きつける「普遍的な要素」が含まれていると判断できます。 

『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』公開!

さて、昨年2023年12月22日にアニメ映画『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が公開されました。主題歌は「Official髭男dism」(愛称「ヒゲダン」)の『SOUL SOUP』。エンディング主題歌が星野源氏による『光の跡』。両アーティストは、2022年に放送されたTVアニメSeason 1のオープニング主題歌『ミックスナッツ』(ヒゲダン)と、エンディング主題歌『喜劇』(星野源氏)を提供しており、劇場版で再び「超強力タッグ」が結成されたのです。

完全新作ストーリーの本作では、『ロイド[スパイ]×アーニャ[超能力者]×ヨル[殺し屋]×ボンド[予知能力犬]の偽装家族』が、シリーズ史上最大のミッションに挑みます!多くの観客が、アーニャたちが縦横無尽に駆け回る痛快なスパイアクションコメディを、堪能していることでしょう。

なお、TVアニメ版 Season 2も、Amazon Prime Video(アマプラ)、Netflix(ネトフリ)、ABEMA(アベマ)などで配信中です。


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