仲代表の「グローバルの窓」

仲代表の「グローバルの窓」

第77回 “I’m already melting. If he proposes to me, I’ll fall in love with him immediately.”?(私もうメロメロ。プロポーズされたらすぐに堕ちてしまいそう)

2024.09.24

蓄電池システムが作動しない!

 マリーナ?ベイ?サンズホテル(MBS)の地下5階に設置した蓄電池システムは、実際の稼働まで更に調整が必要となりました。コントローラーがなぜかうまく作動しなかったのです。ゴパルは技術がわかるので、アメリカ側に状況を説明し、アメリカ側と連日、問題究明に努めました。1か月以上続いたでしょうか。その間、ゴパルと私はほぼ毎日、MBSのサイトに通い詰めました。

 MBSができてから、シンガポールの象徴はマーライオンからMBSに変わったと言われます。日本でもスマップのCMに登場し、今やシンガポールといえば、MBSが代名詞となりました。シンガポールの観光スポットでもMBSのすぐ裏手にある熱帯性植物園、「ガーデン?バイ?ザ?ベイ」が人気NO.1のスポットとなりました。しかし、我々は観光客で日夜賑わうMBSにいながら、地下5階という一般の人の入れない、そして知る由もない場所で蓄電池システムと奮闘していました。

マリーナ?ベイの夜景

 夕方6時を迎え、今日もまた解決案が見つからなかったと落ち込む毎日が続きました。夜になると、MBSの前のマリーナ?ベイで無料のレーザーショーが始まります。知る人ぞ知るイベントです。私はたまに徒労の一日が終わると、レーザーショーを観て、帰宅しました。マリーナ?ベイエリアの夜景に映えるレーザーショーはとても美しく、夕涼みの格好の時間でした。

 MBSエリアはホテルだけではなく、カジノやコンベンションホールのある巨大ショッピングモールが代表となります。モール内では、ベニスをまねて水を導き、その上をゴンドラが進みます。お店は一流ブランドが目白押しです。カジノは、外国人は無料、シンガポール人は百シンガポールドルを払わないと入れません。射幸心を煽るので、シンガポール人には一定の規制をかける一方、外国人からは外貨を落としてもらおうという魂胆です。仕事ですっきりしない気持ちをひきづりながらも、私はシンガポールを象徴するエリアのど真ん中にいる時間を楽しもうと思いました。

 マリーナ?ベイは四方がシンガポールを象徴する建造物に囲まれています。北はリッツ?カールトンホテルに代表されるホテルやスタジアム、西は荘厳なフラトンホテルや瀟洒なフラトン?ベイ?ホテルなどの建造物に加え、マーライオン像があります。南は金融街のシェントン?ウエイの高層ビル街、そして、東はMBS、カジノやコンベンションホールの入ったショッピングモール、そして、マリーナ?ベイに咲く大輪の花、「アートサイエンス?ミュージアム」が並んでいます。夜になるとこうした建造物が競い合うようにライトアップされ、一日のクライマックスが始まります。日中の暑さの気怠さとは違った熱帯の国の熱い夜の始まりです。

熱帯の国の夜

 日本から常務の秘書(女性)が友達とシンガポールに来た時のこと。私はチリクラブで有名なお店に招待しました。チリクラブとは、カニをチリソースで炒めたシンガポールの代表的な料理です。カニ好きの人にはたまらなくおいしいでしょう。チリクラブで舌鼓を打ったあと、彼女らをマリーナ?ベイの夜景が一望できるMBSの最上階のバーに案内しました。最上階にはバーの他にあの有名なプールがあるのですが、プールには宿泊客しか入れません。MBSがオープンした頃は、だれでもお金を払えばプールに入れたのですが、あまりに人が殺到したため、宿泊客だけに限定したようです。

 最上階のバーから眺めるシンガポールの夜景は、香港の百万ドルの夜景にも劣らない調和のとれた美しい景色です。マリーナ?ベイの水面にビルの灯が映り、それぞれの灯の下では熱帯の夜に酔いしれるランデブーが繰り広げられているだろうと想像をめぐらしました。そんなことを想像すると夜景が蠱惑的に輝いているように見えてきます。魅力的(蠱惑的?)な夜景を見ながら、私はゴパルとMBSの地下5階でついさきほどまで悪戦苦闘していた状況とのギャップをおもしろく感じていました。熱帯の国は、いろいろな意味で昼夜のギャップが激しいと思います。昼間暑くて、しんどい仕事だと夜は大いに弾けるのかもしれません。東南アジアは夜が楽しい(妖しい?)と言われるのは、熱帯という気候が多分に影響しているようにも思います。

もうメロメロ

 さて、秘書の方はというと夜景に痛く感動したようで、おもわず、「私もうメロメロ。ここでプロポーズされたらすぐに堕ちてしまいます」と言うのです。なるほど、たしかにこの夜景はそのくらいの効力があるのかもと思えてきます。ひょっとしたらシンガポール人はここに恋人を連れて来て、愛をささやくのかもしれません。

 我々は秘書の方の言葉に頷きながら、シンガポールスリングで乾杯しました。シンガポールスリングは、シンガポールで生まれたジンベースのカクテルのことです。サマセット?モームがシンガポールの夕焼けを「東洋の神秘」と称えたことに因んで考案されました。1915年にシンガポールの老舗ホテル、ラッフルズ?ホテルのロングバーのバーテンダーが最初に作ったといわれています。この日、MBSからの夜景とともにシンガポールスリングは心を酔わせてくれました。熱帯の夜は魅惑的です。

    

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