日本でもさまざまな企業で外国籍社員の働く姿が見られるようになりました。スキルを活かして十分に活躍している人もいますが、伸び伸びと働けていない人もいます。その原因のひとつとして、外国籍社員への教育が足りていない、あるいは適切な内容ではないことが考えられます。一体どのような社員教育が不足しており、どのような内容が望ましいのでしょうか。日本における外国人労働者の状況とあわせて見ていきましょう。
外国人労働者の状況
今、日本の外国人労働者はどのような在留資格で、どのような仕事をしているのでしょうか。厚生労働省が公表している「「外国人雇用状況」の届け出状況」(澳门葡京赌城_澳门网投平台-【在线*游戏】元年 10 月末現在)についての概要から、日本における外国人労働者の状況を見てみましょう。
澳门葡京赌城_澳门网投平台-【在线*游戏】元年10月末現在、外国人労働者数は1,658,804人。前年同期比で198,341人(13.6%)増加し、過去最高を更新しています。その内訳(カテゴリー別)は、以下のとおりです。
- 身分に基づく在留資格[定住者、永住者、日本人の配偶者など]531,781 人 (全体の 32.1%)
- 技能実習383,978人(同23.1%)
- 資格外活動[留学生のアルバイトなど]372,894人(同22.5%)
- 専門的?技術的分野の在留資格[例:大学教授、経営者、弁護士、医師、看護師、介護福祉士、エンジニア、企業内転勤者など]329,034人(同 19.8%)
- 特定活動[例:EPA(経済連携協定)に基づく外国人看護師?介護福祉士候補者、ワーキングホリデー、外国人建設就労者、外国人造船就労者など]41,075人(同2.5%)
上記のデータからも分かるように、現在、日本では外国人労働者が増えてきており、多様な分野でさまざまな国籍の外国籍社員が活躍しています。その一方で、実際に外国籍社員が働く現場を見てみると、言葉や文化が日本人とは異なるがゆえの課題も散見されます。具体的にはどのような課題が見られ、またそうした課題に対処するためには、どのような教育が必要なのでしょうか。このあと見ていきましょう。
外国籍社員の教育はなぜ重要か?
2015年に実施された厚生労働省(2015)「外国人労働者の受入れに関する実態調査」において「企業が今後外国人材を活用したい分野と活用する上での課題」を尋ねた結果、全体として「日本語能力に問題がある」との回答割合が 29.5%と最も高く、ついで「日本人社員とのコミュニケーションに不安がある」との回答割合が19.5%と高くなっています。この2つの課題は、幅広い職種で見られますが、とりわけ製造現場の技術者?技能者、製造派遣?請負、技能実習生で高いようです。
また、2018年末調査のデータから企業が行っている外国人材への研修内容を在留資格別にまとめたもの(2018 年11~12月実施の東京商工リサーチ「外国人雇用に関するアンケート調査」のデータを基に作成)を見ると、以下のことが分かります。
- 「業務に関する研修」については、いずれの在留資格の外国人に対しても実施割合は高い(日本人と同時/別の合計で 68.5%~94.8%)が、それ以外の研修については、在留資格別で差が見られる。
- 日本語研修の実施割合については技能実習生では高いが(52.0%)、それ以外の在留資格の外国人材では低い(6.6%~16.4%)。
- 日本の商習慣?ビジネスマナーに関する研修の実施割合(9.9%~22.7%)と比べても、日本語研修の実施割合は低い。
以上のことから、
- 外国人労働者について多くの企業が「日本語能力に問題がある」「日本人社員とのコミュニケーションに不安がある」といった課題を感じている。
- それにもかかわらず、技能実習生以外の在留資格の外国人に対して日本語研修を行っている企業は少ない。
ということが分かります。
例えば海外や日本で優秀な人材を採用し、配属しても職場になじめず退職してしまう、業務上、十分な能力やスキルを持っているものの日本語でのビジネスコミュニケーション力が不足しているため、業務を進めることができない、といったさまざまな影響が考えられます。
それらを避けるためにも、企業は外国籍社員を対象にした日本語や日本人とのコミュニケーションに関する教育をする必要がありますが、どのような教育が望ましいのでしょうか。次に見ていきましょう。
外国籍社員が成長するためには、どのような教育方法が有効か?
語学を身に付けるには、相応の時間が必要です。外国籍社員に必要なスキルを身に付けて成長してもらうためには、入社前後に研修を行ったあと、業務のなかで先輩社員から指導してもらい、必要に応じてフォローアップ研修や日本語指導を行うという継続的な教育の仕方が有効です。
このなかでも入社前後の研修が特に重要。スタートの研修がうまくいかないと、外国籍社員が定着しにくくなったりその後のコミュニケーションに大きな影響を与えたりといった不都合が生じやすくなるからです。
入社前後の研修では、次のようなことを学んでもらいます。
成果の出ない研修にありがちな課題
全部が全部そうというわけではありませんが、日本における従来の英語学習は、「テキスト精読」や「単語?熟語暗記」といったインプット中心のものが多い傾向にあります。それでは英単語や文法などの基礎知識は頭に入っても、実際のビジネスシーンで使える実践的な英語力を磨くことは難しくなります。また、「異文化理解」については重要視されていないケースも少なくありません。
成果の出ない企業研修では、そういった従来型の日本の英語学習を取り入れていることが多いようです。やはりインプット中心で、かつ外国籍の人々と協働するうえで持っておくべき「マインドセット」の強化に関するカリキュラムが欠けているのです。
成果の出るグローバル研修にするには、一体どのようなことに注意すればいいのでしょうか。続いて見ていきましょう。
入社前後の研修
主なものをご紹介します。
企業の業種や対象者の職種にかかわらず、多くの場合次の2つの研修は必要となるでしょう。
- ビジネス日本語研修
ビジネスで使われる日本語表現や「敬語」などの学習を通して、効果的なコミュニケーションを学んでもらう研修です。難しい専門用語は読み書きできても会話は得意でないといったケースも見られますので、日本の大学(院)の留学生といった高度人材においても日本語研修は大切です。なお神田外語キャリアカレッジでは、高度外国人材を対象に短期間で日本語のスキルを習得できる研修プログラムをご提供しています。ビジネスマナーと組み合わせたカスタマイズ例もありますので、ぜひ詳細をご覧ください。 - ビジネスマナー研修/異文化理解
日本でのビジネスマナーや日本の文化について理解を深めてもらう研修です。
そのほか、必要に応じて次のような研修も行います。
- 外国籍新入社員ビジネス日本語研修
日本のビジネス用語や日本人との仕事上のコミュニケーション、日本人の仕事の考え方や姿勢などを学んでもらう研修です。一般的な新入社員研修を日本人と一緒に行う場合は、外国籍社員のみで内定者研修を行い、あらかじめ日本語でのコミュニケーションに自信を付けてもらっておくと効果的です。このあとに紹介する事例でも、入社前にビジネス日本語力を強化する研修を実施しています。 - 生活マナー研修
主に、日本での滞在が初めてとなる受講者が対象になる研修です。日常的によく使われる表現や交通機関の利用法、ゴミ出しなどについて学んでもらい、日常生活で困らないようにすることが目標です。
外国籍社員教育の成功事例紹介
ここでは、成功した外国籍社員教育の事例を2つ紹介します。
入社前にビジネス日本語力を強化
土木建築関連の事業を行うこの企業では、技術系の大学院留学生を新卒社員として採用。この外国籍社員は日本語の専門用語は扱えるものの、日本語で一般的な会話を行うスキルに課題がありました。そこで、入社後にほかの新入社員と合同で行われる新入社員研修や配属先でのコミュニケーションを円滑化するために、ビジネス日本語力を強化する研修を入社前に実施。その結果、専門用語を使用する場合に限らずビジネスシーン全般における話す力が強化され、新入社員研修や配属時の不安も解消されるという成果が得られました。
実践的な内容を取り入れたビジネス日本語プログラムを短期間で実施
建設工事や建設関連の事業などを行うこの企業では、インドネシア、ベトナム、タイなどのアジア拠点における幹部候補人材を対象とした中堅技術者育成研修の一環として、ビジネス日本語集中プログラムを実施しました。対象者はこのあと1年間東京での実務研修や現場実習を行うことになっており、ビジネス日本語力を含めた日本語でのコミュニケーション能力を必要としていました。
研修プログラムを作成した神田外語キャリアカレッジは、過去の日本語研修の実績から、受講生の出身国別の得意?不得意分野を想定したカリキュラムを準備。少人数制にして常に受講生の状況を把握しながら研修を行いました。歴史的建築物や公共施設を訪れるといったフィールドトリップを取り入れ、研修最終日には実際に訪問した建築物に関する短いプレゼンテーションを行えるまでに。実践的なレッスンを行ったことで、1.5ヵ月という短期間で大幅なスキルアップを達成しました。
まずは日本語を身に付け、文化を理解してもらうことが重要
外国籍社員に日本で活躍してもらうためには、まずはビジネス日本語を身に付け、日本の文化を理解してもらうことが重要です。専門的な技能を持っていたとしても、言葉の壁によってそれが活かされないことがあったとしたら、企業にとっても損失となります。業務そのものに関する研修も大切ですが、そのベースとして必要な日本語や文化についての教育が不足しないように注意しましょう。
参考: