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2021/10/24
(最終更新2021/10/28)
恐竜でしょうか?
いえこれはオオヤモリ(別名トッケイヤモリ)です。
写真の個体は体長30cmくらいかと思います。
東南アジアとその周辺に分布しています(出典①)。
(赤斑トッケイヤモリの分布です。他に中国南部やベトナム北部には黒斑トッケイヤモリがいるそうです)。
タイではとても身近な動物です。
暗くなってくると民家の近くから「パッポー」と大きな声が聞こえてきます。
その正体がこのオオヤモリです。
私は初め声だけ聞いて鳥かと思いました。
一体どんな鳴き声でしょう?
以下のYouTubeから聞いてみてください。
タイでは「トゥッケー」と聞こえるようです。
なのでこのオオヤモリのタイ語名は「トゥッケー」(??????)です。
日本の図鑑でも「トッケイヤモリ」と紹介されています(出典②)。
英語は “Tokay Gecko” です。
ちなみに近隣言語ではこんなふうに呼んでいます。
カンボジア語「トッカエ」(?????)
ミャンマー語「タオッテー」()
モン語(Mon)「カープケー」()
ベトナム語「タッケー」()
インドネシア語「トッケッ」(Tokek)
フィリピンのタガログ語とセブアノ語「トゥコ」(Tuko)
名前はおそらく鳴き声に由来するオノマトペかと思います。
ちなみに私は「パッポー」に聞こえます。
さてYouTubeのコメント欄にはタイ語で「効果てきめん!」「怖がって寝ちゃった」という書き込みがたくさんあります。
これはどういうことでしょうか?
実はタイでは、子供が泣き止まないとき「オオヤモリが肝を食らいにくるぞ」と脅かすんだそうです(出典③)。
ぐずる子にはYouTubeでオオヤモリの鳴き声を、というのが今どきでしょうか。
なおタイ語の書き込みの一部には「うちの子は怖がらなかった」「笑ってた」というコメントもありました。
日本の子供には効くんでしょうか?
さてタイにはこのオオヤモリ以外にも身近な爬虫類がいます。
写真①はタイ語で「チンチョック」(??????)という体長10cmほどの小さなヤモリです。
家のなかでばったり鉢合わせすることが多いです。
そして「チョッチョッ」とかわいく鳴きます(上の動画)。
タイでは幸運をもたらす存在とされ、外出のタイミングで鳴き声を聞いたら「今、出かけないほうが良いよ」と警告してくれているのだそうです(出典③)。
写真②は泳ぎが得意なミズオオトカゲです。大きさは2m~2.5mもあります(出典②)。
「講談社の動く図鑑MOVE」ウェブサイトに掲載の「モンスターハンター平坂寛のびっくり! 生きもの烈伝」シリーズにもこのミズオオトカゲの記事があります。
NHKの番組「ダーウィンが来た!」でとりあげられたこともあります。
タイではミズオオトカゲは不吉な動物とされています(出典③)。
芸術大学シラパコン大学では構内でこのミズオオトカゲが水に潜るところを見たら試験に落ちるというジンクスもあります。
さらには試験前にミズオオトカゲが前を横切ったらF(落第)だけどそれが試験後ならA評価だとか、水から上がってくるところを見たらAだとか、より複雑なバージョンもあるそうです(同大学の教員より)。
なおタイ語ではミズオオトカゲを「ヒア」(?????)と呼びますが、「ヒア」はかなり強めの罵倒語でもあります。
決して人には使わないように!
考えてみよう?
他の国や地域ではこれら身近な爬虫類にどんな意味をこめているのでしょうか?
例えばインドネシアの南スラウェシでは、家のなかにオオヤモリ(トッケイヤモリ)がいるとお金がたまるという考えがあるそうです(坂田先生より)。
フィリピンでは鳴き声を聞くと幸せが訪れるとも。
誰か卒論でまとめてみてはどうでしょう?
「東南アジアの爬虫類表象をめぐる民俗学的考察」みたいな?
【出典】
① Smithsonian’s National Zoo & Conservation Biology Institute, “Tokay gecko” https://nationalzoo.si.edu/animals/tokay-gecko(accessed 21 October 2021).
②加藤英明監修2021『講談社の動く図鑑MOVE mini は虫類?両生類』講談社.
③冨田竹二郎1997『タイ日大事典』めこん.
※カンボジア語とベトナム語については神戸大学の下條尚志さん、インドネシアについては澳门葡京赌城_澳门网投平台-【在线*游戏】の坂田ロスナエニ先生、フィリピンについては京都大学大学院の吉澤あすなさんより情報提供いただきました。ありがとうございました。
文&写真 和田理寛